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しかも彼らはその系図においては清原深養父の後と称し、それに近い。

誇張して言ったら人かげであったかも知れない、——もう一歩、進んでいうとその北側へ逸のがれた逃げ方、かげの動き方が非常にのろかったのが、松岡にもふしぎに思われた。
「まさか?——」
松岡はそうも思うた。
三階へぎしぎし上りはじめた。
そして自分の部屋へ這入ると初めて先刻の影が或る幽かすかな物音を引いていたことを瞭乎はっきりと思い出した。廊下の坂の上にたまった埃とも砂とも云えない細かなざらざらしたものの上を、強く、踏んで引いた一種のすれた物音であった。物音というよりも、どう言ったらいいか、西洋紙を幾枚も重ねたのを上の方の一枚を引いた、ああいう幽かな物音であった。
「あの部屋は明いているのだが、造花の枝や紙の型なぞを束ねて積んであるらしい。するとそれが何かにすれた音だったかも知れない——」
昼間無理をして積んだのが夜になって、湿ったためにしなえてその一部がくずれたのかも知れぬ、松岡はそう思うとそういうこともあることに気づいた。しかし、それはそれにしても何かかげのようなものの、横の方へ幅びろく、うつ向いて通りすぎたのは一いったい何だろう、松岡がそう考えたとき、五六十本ばかりの針の尖端で襟元を突かれたような、一時的ではあったが非常な悪寒が、ぞっくりと通りすぎることを感じて、或る震えをおぼえた。
かれは襖をあけ、そとの廊下を神経的にあけて見たが、何も変ったことがあろう筈がなかった。これまででも松岡だけは何の不思議も気味わるさもこの三階では感じなかった。他のいろいろな人が越すごとに寧ろ可笑おかしかったくらいだった。

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